院長からメッセージ

妊娠、分娩は自然の営みです。妊娠、分娩に医者が立会うのは一部の文明国の人間と、動物園の動物と、ほんの一部の家畜だけで、その他の人間、動物は「自然分娩」です。しかし妊娠、分娩を全て自然にまかせていると、10回に1~2回異常妊娠、異常分娩になり母親または赤ちゃん、あるいは両方とも後遺症を残したり最悪は死亡します。
 出産する病院を選ぶ基準はその病院が妊娠、分娩に対して母体、胎児、新生児にどのようなケアを行っているかで選んで頂きたい。以下当院で行っている妊娠、分娩、母体、胎児、新生児に行っているケアを説明します。(当院独自に行っているものをリストアップしました。)

胎児に対するケア

1.NST(Non Stress Test)

 胎児にとって子宮の中は極めて快適な環境なのですが、100%安全とは言えません。臍帯は命綱ですが、時として絡まったりして命取りになることもあり、また子宮内で起こる病気もあります。子宮内の胎児の健康状態をチェックするのがこのNSTです。お母さんと赤ちゃんにストレスを与えない状態で胎児心拍数と胎動と子宮収縮を観察します。これによって胎児が健康でいるかどうか、かなりの確率で判ります。当院ではこの検査を十数年前から全部の妊婦さんに行っております。

2.胎動カウント

 胎児が危険な状態に陥るのは何も病院で診察した時だけではありません。自宅にいる時間の方が圧倒に多いわけで、自宅で胎児の健康状態をチェックするのが胎動カウントです。元気な胎児はよく動くのです。目安は元気な胎児は動き初めてから10回動くのに30分以上はかからないとされていて、もし30分以上かかると、何か危険にさらされていると考え、来院して頂いてNSTを行います。アメリカでは、もし母親にこの方法を教えないで子宮内胎児死亡を起こすと、医者が訴えられるという程重要な検査とされていますが、日本ではあまり行われていません。この検査で一昨年は2人の赤ちゃんが助かっています。

3.超音波カラードップラー法

 特殊な超音波で胎児の血流を測り、胎児の異常を発見する装置です。NST
で一寸おかしいと思われる時、また異常な赤ちゃんを産みやすい高齢のお母さん、血圧の高いお母さん、糖尿病のお母さんの時、表面上は異常無く見える胎児でもこの検査によって潜在している異常を早期に発見して対応が出来ます。生まれる前に異常を発見して対応するのと、生まれてから気づくのでは全く違います。

新生児に対するケア

1.臍帯血ガス分析

 臍帯動脈血のpH、酸素濃度、炭酸ガス濃度を測定することによって新生児の内なる健康状態をチェックします。全例行っております。アメリカでも全例行うべきとしてますが、経費がかかるので異常児にのみ行っている現状です。

2.乳幼児突然死症候群のモニター(SIDS)

 乳幼児突然死症候群は、生後1年以内の赤ちゃんの2000人に1人の割合で起こる呼吸中枢の病気で、眠っているうちに突然呼吸が停止して死亡する病気です。1998年山形県で4人の死亡が確認されています。呼吸中枢の未熟から起こるとされ、どのような検査でも発見不可能です。ただひたすら呼吸停止を起こさないか監視するだけです。
 当院では、新生児の全ベッドにこのモニターを取りつけております。また、このモニターをレンタルであっせんしています。

3.新生児聴覚検査

 1000人に5~6人は大きな音が聴こえても、お母さんの話し声のレベルの音が聴こえない軽い難聴の児がいると言われています。赤ちゃんは母親と会話をしながらおしゃべりを覚えていきます。軽い難聴の児は、母親の話し声が聞こえないのでおしゃべりが下手になってしまいます。しかし、これに気づくのが一才半とか二才になってからで、これでは手後れで一生おしゃべりが下手なハンディをしょってしまいます。また、赤ちゃんは産まれてすぐから眼が見えているので、明らかに母親が自分に向かって話しているのに、その声が聴こえないのがすごく不安なのです。従って耳の遠い児はどうしても情緒不安定になっていしまいます。
 当院では、東北で初めてこの聴覚検査装置を導入して1998年より検査を行っていますが、この一年間で3人の難聴の児を発見しております。早期発見すれば生まれてすぐから、親も回りの者も「この子は耳が少し遠いぞ」と理解して、早くから少し大きな声で話かけるとか、耳鼻科での補聴器を使ってのトレーニングが可能となるのでキチンとしゃべれるようになり情緒不安定にもならないのです。全ての赤ちゃんが検査を受けるべきもので、アメリカではすでに全例の検査が義務づけられていますが、日本では厚生省は5年後より補助をだすといっています。
 当院では出生直後に希望される赤ちゃん全例に2,000円で行っています。生後6ヶ月まで検査可能で、他医院で生れた赤ちゃんの検査もお引き受けしておりますが、5,000円の検査料が必要です。

母体、胎児、新生児に対する総合的ケア

 当院では、二人の産科医と1人の内科医に内科的アドバイスを、一人の小児科医に小児科的アドバイスをもらえる診療体制をとっております。分娩時に何が恐ろしいかというと、分娩後の出血です。もしその場に医師が居合わせず、きちんとした処置をしないと30分で母体死亡を起します。アメリカではすでに一人の医師では妊娠の管理までは行えますが、分娩を扱うことは許されていません。必ず契約した病院で複数の医師のもとで行わねばなりません。外科も同様です。
 現実に1人で外来診療を行い、回診をして、分娩に立会い、手術をして、超音波検査を行い、不妊治療をまともに行えるでしょうか。手術中に分娩があって異常になったらどうなるのでしょうか。こうして考えるとアメリカの考え方がより良いといえるでしょう。
 今、治療を受ける際にはセカンドオピニオン(第2の意見)を必要とされています。当院では、二人で意見を出し合ってより良い治療法を選択しながら、治療を行っています。
 病院創立から今年で51年になり、その間34,000人以上の赤ちゃんが生れていますが、小さな赤ちゃんが亡くなったことはありますが、母体死亡は現在まで0です。

 アメリカでは、ある病気の検査法、治療法が新しく発見されると、その時点からすべての医師がそれを義務づけられ、怠ると訴えられます。エイズがその例でアメリカでは非加熱製剤を即座に中止しましたが、日本は5~6年もダラダラと使い続け、たくさんのエイズ感染者を出してしまいました。私はアメリカの考え方が正しいと思います。新しい検査法、治療法はお金も掛かりますが実行すべきと考え行っています。
 以上、妊娠、分娩と胎児、新生児、母親に対する当院で行っている安全対策について述べました。分娩する病医院を選ぶご参考になれば幸せです。